沈下修正工事

水平でなければならない建物が、何らかの事情によってある方向に斜めに傾くように沈んでしまうことを不同沈下といいます。不同沈下を起こすと、外壁などに亀裂が入る、柱が傾きドアや窓が開けにくくなる、雨が吹き込む、排水が流れにくくなる、基礎に亀裂が入るなどさまざまなトラブルが発生するため、もとの水平に戻さなければなりません。

不同沈下の原因は、地盤の液状化や地下水位の変化、地盤の軟弱によるものなどさまざまなケースがあり、その修正方法の選定と工事にあたっては、専門的な知識と経験に基づき、建物の規模・形態・経年変化、沈下の形態・程度・地盤状況などから総合的に検討して決められます。

修正の方法には以下のようなものがあります。

銅管圧入工法

基礎ごと沈下修正するための代表的な工法です。小口径鋼管杭を基礎底盤下に圧入し、それを反力として建物を油圧ジャッキによって沈下修正します。戸建住宅など小規模建築物の場合には、Φ160mm程度の鋼管杭が採用されます。

ポイント

・木造からRC構造物までほぼすべての建物に対応できる

・基礎躯体が比較的健全な場合に対応できる

・良好な支持層深度が比較的深い場合に対応できる

・居住したままでの施工が可能である

 

耐圧盤工法

基礎底盤下に良質で安定した地盤上に耐圧版(鉄製あるいはコンクリート製)と鋼材(一般的にはH形鋼)を配置し、それを反力として建物を油圧ジャッキによって修正します。鋼管圧入工法と並んで、基礎ごと沈下修正するための代表的な工法です。

ポイント

・木造、S造、比較的重量の軽いRC構造物などに向いている

・選定条件は支持地盤の沈下が終息していることである

・耐圧版設置地盤となり得る、安定した支持地盤面が存在する場合に対応する

・居住したままの施工が可能である

 

ポイントジャッキ工法

基礎と土台を切り離し、柱直下の土台下に油圧ジャッキを設置して、直接建物をジャッキアップする工法です。この工法は上部構造のみの沈下修正を目的とした工法であり、基礎の修正を行わない場合に採用されます。

ポイント

・木造の建物だけに対応する

・選定条件は支持地盤の沈下が終息していることである

・既存基礎が比較的健全な場合に対応する

・比較的沈下量が小さい(約10cm以内)に対応する

・床下に施工可能な空間がある場合に対応する

・変形傾斜した場合の部分修正や建物片側のみの場合に対応する

・居住したまま施工が可能である

 

根がらみ工法

基礎と土台を切り離し、柱または土台に取り付けたH鋼やレールなどの根がらみを井桁に組み、建物の変形を抑止しながら建物全体をジャッキアップする工法です。

ポイント

・木造、S造の建物に向いている

・沈下量が大きい場合に対応する

・基礎の築造替えや地盤改良など、比較的大規模な基礎修復を行う場合に対応する

・施工中の仮居住の確保が必要になる

修正前

修正後

動画 沈下修正工事の4つの工法

Ⓒ Akebono 2022